マテリアリティとKPI
中期経営計画とマテリアリティ
当社グループは、1957年の創業以来、お客さまのために何ができるかを常に考え、誠心誠意尽くすという「飛脚の精神(こころ)」を胸に、「信頼・創造・挑戦」を企業理念として掲げてきました。加えて、2017年度に定めた「CSR重要課題」等を指針に、ステークホルダーの皆さまの期待に応えるべく、事業活動を通じてさまざまな社会課題の解決に取り組み、新たな価値の創造を目指してまいりました。
一方で国際社会では気候変動対策をはじめとした社会課題への対応がより一層求められており、企業でも共有されるとともに、当社グループでは、2030年に向けた長期ビジョン「Grow the new Story. 新しい物流で、新しい社会を、共に育む。」を掲げるなど、社内外の経営環境は大きく変化しています。
こうした中、当社グループのさらなる中長期的な企業価値向上を実現すべく、事業活動における重要性の観点から2023年度に「CSR重要課題」を見直し、中期経営計画「SGH Story 2024」で定めた「重点戦略(10項目)」を、ESGを含む経営上の重要課題「マテリアリティ」として再定義しました。今後もサステナビリティと経営計画の統合を推進してまいります。
特定プロセス
次のプロセスを経てマテリアリティを特定
- 内外環境分析を通して、当社グループにおける中長期的な事業機会とリスクを整理
- 1に鑑みてグループ経営課題を洗い出し、優先順位の高い重要項目を抽出
「グループ経営戦略会議」や「グループ予算委員会」でのディスカッションを通して、中期経営計画の重点戦略10項目を設定 - 「サステナビリティ委員会」の下部組織「マテリアリティ専門部会」にて、マテリアリティの再設定について議論
2で設定した中計重点戦略10項目をマテリアリティとして再定義
※マテリアリティ毎に設定したKPIは年一回モニタリングを行い実績を開示。マテリアリティの内容についても必要に応じて見直しを実施。
価値創造ストーリーにおけるマテリアリティの位置づけ
マテリアリティの概要
マテリアリティとKPI
大項目 | 小項目 | 選定理由、目的 | 主な取り組み | KPI | 2023年度進捗 |
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総合物流 ソリューション(GOAL®)の 高度化 |
(1)脱炭素をはじめとした社会・環境課題解決に向けたサービスの推進 | 気候変動問題や、災害の激甚化、少子高齢化等のさまざまな社会課題への対応が、当社にも一層求められていると認識。当社グループが提供する物流ソリューションを通じて、お客さまにとってより持続可能かつ地球環境へも配慮したサプライチェーンの構築をすることで、社会・環境への負担軽減を図る。 | 自社およびお客さま(荷主)のGHG排出量削減 |
Scope1+2排出量削減率 (2013年度対比) ※2024年度目標:15%削減 |
・Scope1+2排出量 2013年度対比19.6%削減 ・再エネ導入率の拡大により前期比7.1%削減 |
電力使用量に占める再エネ率 ※2030年度目標:40% |
・再エネ率47.7%(前期比+19.9ポイント) ・導入計画が前倒しで進んでおり2023年度中に目標達成 |
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環境対応車比率 (EV、HV、CNG、クリーンディーゼル合計) ※2030年度目標:98% |
・環境対応車比率77%(前期比+13ポイント) | ||||
社会・環境課題解決に向けた新規サービス・事業の検討 | 新規サービス・事業の創出と拡大に向けた取り組み推進 | ・ユーグレナ社と次世代バイオディーゼルを使用した配送サービスをスタート ・飛脚JR貨物コンテナ便、家電製品リサイクルサービスの利用件数拡大 |
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(2)TMS・3PLネットワークの拡充と周辺ソリューションの高度化 | 労働力人口減少や、テクノロジーの進化およびお客さまのサービス多様化が要因となり、お客さまは物流ソリューションの高度化が求められている。「宅配便以外の領域」での機能や提案力の強化によって、お客さまのサプライチェーン全体への提案領域とサービス拡充を図る。 | ・TMS案件数の拡大 ・既存顧客のTMS利用率上昇 |
TMS売上高 ※2024年度目標:1,200億円 |
・TMS売上高1,130億円(前期比94.4%) ・新型コロナウイルス感染症関連案件の剥落等により前年度を下回って推移(新型コロナウイルス感染症関連の特殊要因を除けば、前年度を上回って推移) |
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(3)国際・海外向けサービスの強化 | 世界経済の中長期的な成長を背景とする国際貨物量の拡大に対して、日本発着貨物を含む国際・海外向けサービスを強化することで対応する。お客さまの国際ビジネス拡大への寄与とともに、当社グループのラストワンマイルにおける物量の増加を図る。 | ・既存顧客シェア拡大 ・新規レーン、インダストリ拡大 |
エクスポランカ社営業収益 ※2024年度目標:1,360億円 |
・エクスポランカ社営業収益1,138億円(前期比54.9%) ・海上、航空貨物取扱量は世界経済の減速に伴い減少、運賃も底這いで推移 ・M&Aを通じた北米での通関、フォワーディング機能の強化により、物流サービスを拡販 |
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(4)宅配便のサービス向上と効率化による収益性向上 | グループの重要な事業基盤である宅配便事業において、市場成長を見据えたキャパシティの向上や業務効率化に向けた投資を推進することで、サービス向上と収益性の向上による、宅配便事業における事業基盤の維持と持続的な事業成長を図る。 | ・新サービス開発、宅配便周辺サービスの強化 ・新領域への拡販 |
取扱個数 ※2024年度目標:13.8億個 |
・取扱個数13.7億個(前期比97.4%) ・国内物価高騰による家計消費支出の弱まり等を受け、減少 |
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適正運賃収受の取り組み | 平均単価 ※2024年度目標:662円 |
・平均単価648円(前期差+5円) ・継続的な適正運賃収受の取り組みを実施 |
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宅配便の生産性向上 | デリバリー事業営業利益率 ※2024年度目標:7.7% (協力会社を含む2024年問題対応による経費の積み上げにより、前年から低下見込) |
・デリバリー事業営業利益率7.9%(前期差▲1.6ポイント) ・取扱個数減少等により、利益率は前年より低下も、配車見直し等のコストコントロールにより目標水準を達成(2023年度目標7.8%) ・「佐川急便LINE公式アカウント」を開設、不在再配達の改善に寄与 |
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競争優位創出につながる 経営資源の拡充 |
(5)アライアンスを含めた国内外輸配送ネットワークの強化 | 労働力人口の減少、ドライバーの高齢化が進行する環境において、多様なパートナーとのアライアンスを強化することで、国内の輸配送ネットワークの維持・拡大を図る。また、海外では、現地の有力なパートナーとのアライアンスを活用した収益拡大を企図。 | 【国内】 パートナー企業(協力会社)との関係強化およびサポート体制の拡充 |
・SAGAWAパートナープログラムの拡充 ・適正取引促進会の実施 |
・SAGAWAパートナープログラム対象者を拡大、専用サイト上での機能追加によるコミュニケーション強化を実施 ・2022年度末より定期的に適正取引促進会を実施し、パートナー企業(協力会社)からの要望確認、協議の場を設定 |
【海外】 営業戦略に紐づいたアライアンス先の拡充 |
アライアンス先の拡充 | ・エクスポランカ社では2022年度取得の北米物流会社2社との連携によるネットワークの拡充を実現 | |||
(6)人的資本への投資及びエンゲージメントの向上 | 2030ビジョンにおける成長ドライバーである、宅配便以外の事業(TMS、3PL、国際等)を拡大するためには、グローバル人材、DX人材等のソリューション人材の獲得・育成が必要。新しいことに挑戦できる企業風土を醸成することにより、「次世代の競争優位性創出」を推進するための人材基盤の拡充を図る。 | ・経営人材、ソリューション提案ができる人材の育成 ・多様な働き方の実現、柔軟な人材登用 |
・経営人材、ソリューション人材育成に向けた研修等の実施 ・働き方改革施策の推進 |
・経営者育成プログラム、女性キャリア支援研修、次世代リーダー研修等の実施 ・DE&I推進に向けた社内委員会、セミナー等の継続的な実施 |
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・従業員エンゲージメント指標の定期モニタリング ・モニタリング結果を踏まえた取り組みの計画、推進 |
・「従業員エンゲージメント」に関する質問への肯定的な回答の割合 ※2024年度目標:57% ・「従業員を活かす環境」に関する質問への肯定的な回答の割合 ※2024年度目標:55% |
・「従業員エンゲージメント」:56%(前年差▲1ポイント) ・「従業員を活かす環境」:54%(前年差▲1ポイント) |
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(7)DXへの投資による競争優位の創出 | 労働力人口の減少やテクノロジーの進化に加え、お客さまのサービス多様化等が背景となり、宅配便もこれまでとは異なる競争環境になる可能性がある。テクノロジーと当社グループのリソースを掛け合わせることで、DXを実現し、社会・お客さまが抱えるさまざま課題を解決できるようなサービスの拡充を図る。 | ・3つの側面(サービスの強化、業務の効率化、デジタル基盤の進化)からの施策推進 ・DX企画立案を担う人材の育成 |
・DX戦略によるサービス/施策の推進 ・DX企画人材育成活動の推進 |
・住友商事、Dexterity社と共同でAI搭載の荷積みロボットの実証実験を開始 ・DX人材の育成に向けた基礎研修および企画ワークショップの実施 |
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(8)オープンイノベーションなどによる新たな価値の創造 | グループ内の知見・価値観にとらわれず、スタートアップや異業種企業が保有している優位性のある独自サービスを当社リソースと掛け合わせることで、新たな価値の創造を図る。 | アクセラレータープログラム開催と、新規事業創出に向けた体制強化 | 新規事業/サービス創出に向けた活動の推進 | ・アクセラレータ―プログラムにおいて、パートナー企業9社による10件の共創アイデアを発表 | |
ガバナンスの 更なる高度化 |
(9)グローバル化に対応したガバナンスの構築 (10)コンプライアンスの継続的な高度化 |
上場企業グループとして、国内外の全てのグループ各社がそのステークホルダーに対して、活動の透明性や信頼性を実現するために、根本的な基盤である、ガバナンスとコンプライアンスの高度化を図る。 | ・国際法務機能の強化、海外子会社のガバナンス強化 ・予防的な法務/コンプライアンス強化に向けた体制整備や教育推進 |
グローバル化に対応したガバナンス強化、コンプライアンス高度化に向けた取り組みの推進 | ・海外事業会社の内部統制制度の強化活動を継続 ・セキュリティ教育、ハラスメント教育等の継続実施 |
管理体制
「グループ経営戦略会議」を活用して、当社所管部署および当社グループ各社とマテリアリティKPIの進捗状況を確認し、達成度に乖離が生じている際には、要因分析や対策の検討を行います。KPIのモニタリングと実績開示は年一回行い、内外の環境変化等によるグループの方針や施策に変化が生じた場合または生じる見込みとなった場合は、マテリアリティの内容や目標、KPIを再設定することも含めて検討します。また、「グループ予算委員会」では、マテリアリティKPIの進捗状況を踏まえた次年度の施策および予算の検討を行い、マテリアリティに対する取り組みを継続的に推進してまいります。
加えて、マテリアリティのうち「アライアンスを含めた国内外輸送ネットワークの強化」「人的資本への投資及びエンゲージメントの向上」「グローバル化に対応したガバナンスの構築」のリスク側面は、「気候変動への適応と緩和」と合わせてグループの戦略リスクに特定しています。グループのリスクマネジメント機関である「グループリスクマネジメント会議」を通じて、上記戦略リスクをコントロールする方策について検討・議論を行い、経営計画への反映を図ります。