マテリアリティとKPI
当社グループでは、2030年に向けた長期ビジョン「Grow the new Story. 新しい物流で、新しい社会を、共に育む。」の実現および中長期的な企業価値向上を目指し、経営上の重要課題「マテリアリティ」を新中期経営計画の始動に伴い下記の通り改定いたしました。
マテリアリティ設定の背景
当社グループは、1957年の創業以来、お客さまのために何ができるかを常に考え、誠心誠意尽くすという「飛脚の精神(こころ)」を胸に、「信頼・創造・挑戦」を企業理念として掲げてきました。加えて、2017年度に定めた「CSR重要課題」等を指針に、ステークホルダーの皆さまの期待に応えるべく、事業活動を通じてさまざまな社会課題の解決に取り組み、新たな価値の創造を目指してまいりました。
一方で、企業を取り巻く環境変化はスピードを増しており、国際社会では気候変動対策をはじめとした社会課題への対応がより一層求められる等、企業が対処すべき課題も多様化・複雑化しています。このような環境の中、当社グループでは、持続可能な社会および当社グループの持続的な成長の実現を目指し、2030年に向けた長期ビジョン「Grow the new Story. 新しい物流で、新しい社会を、共に育む。」を掲げ、本ビジョンの実現および中長期的な企業価値向上を目指し、2023年度に経営上の重要課題「マテリアリティ」を設定いたしました。中期経営計画「SGH Story 2027」が始動する2025年度からは、直近の事業環境変化や、名糖運輸・ヒューテックノオリンおよびMorrison社のグループ入り等による経営資源やステークホルダーの変化を踏まえ、マテリアリティを改定いたしました。これにより、さらなるサステナビリティ経営を推進してまいります。
新マテリアリティの位置づけ
従来、前中期経営計画「SGH Story 2024」の重点戦略10項目をマテリアリティとして設定していましたが、「SGH Story 2027」の策定に伴い見直しを行い、この度新たなマテリアリティを設定いたしました。当社のありたい姿からバックキャストし、マテリアリティを長期ビジョンの実現に向けて解決すべき課題と位置づけ、中期経営計画は本課題の解決に向けた活動計画と位置づけております。

新マテリアリティの特定プロセス

当社グループを取り巻く外部環境認識
昨今、当社グループを取り巻く外部環境は、事業環境の目まぐるしい変化とともに、ますます複雑化しています。国内では、労働力不足が深刻化しており、賃金上昇やインフレを前提とした業務効率化の加速が、すべての企業にとって喫緊の課題となっています。
一方、世界経済は中長期的な成長が見込まれており、海外ビジネスの拡大に向けた積極的なアプローチが求められています。
PEST分析
- 日米首脳交代(関税等の政策変更による、グローバルサプライチェーンの変化)
- 米中対立の激化
- 諸外国での戦争・紛争等の継続による地政学リスクの増大
- 中小受託取引適正化法の施行予定
- 個人情報保護法の改定

- 世界経済の中長期的な成長
- 日本の長短金利の上昇
- 為替変動の激化
- 賃金上昇とインフレ加速
- 若年層におけるコト消費からトキ消費への移行
- 排出量取引制度の開始

- 国内人口減少、高齢化、2024年問題による労働力不足の深刻化
- 入国規制緩和によるインバウンド需要増加、消費者ニーズの多様化、EC化の進展
- 資本コストを意識した経営への要請の高まり
- ESGをはじめ非財務情報の開示要請等の高まり

- 生成AIの本格的な普及
- 5G・6G等、通信規格の進化
- グローバルでのEV化の進展
- 環境に配慮した技術の発展
- DXによる各業種での業務変革の進展
- 情報セキュリティリスクの高まり


当社が特に対応すべき世の中の課題
- 消費活動の変容(多様化、流動化、グローバル化)
- 気候変動への対策(排出量削減等)
- 国内の労働人口の減少→ドライバー不足による運べないリスクの高まり
- コンプライアンス/製品(サービス)の安全性・消費者保護
- 働きがいと経済成長の両立
- 企業の透明性と説明責任
新マテリアリティとKPI一覧
マテリアリティの管理方法
各マテリアリティに設定したKPIに対して、中期経営計画「SGH Story 2027」重点戦略と合わせて進捗状況を確認し、達成度に乖離が生じた場合には、要因分析と対策の検討を行います。KPIのモニタリングは「サステナビリティ委員会」にて実施のうえ、年一回開示を行い、内外の環境変化等によるグループの方針や施策に変化が生じた場合または生じる見込みとなった場合は、マテリアリティの取り組み内容や目標、KPIを再設定することも含めて検討します。
マテリアリティ2024年度進捗状況
2025年3月31日現在
大項目 | 小項目 | 選定理由、目的 | 主な取り組み | KPI | 2024年度結果 |
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総合物流 ソリューション(GOAL®)の高度化 |
(1)脱炭素をはじめとした社会・環境課題解決に向けたサービスの推進 | 気候変動問題や、災害の激甚化、少子高齢化等のさまざまな社会課題への対応が、当社にも一層求められていると認識。当社グループが提供する物流ソリューションを通じて、お客さまにとってより持続可能かつ地球環境へも配慮したサプライチェーンの構築をすることで、社会・環境への負担軽減を図る。 | ・自社およびお客さま(荷主)のGHG排出量削減 | Scope1+2排出量削減率(2013年度対比) ※2024年度目標:15%削減 |
・Scope1+2排出量 2013年度対比22.0%削減 ・再エネ導入率の拡大等により前期比3.4%削減 |
電力使用量に占める再エネ率 ※2030年度目標:40% |
・再エネ率56.4%(前期比+8.7ポイント) ( 2030年度目標については脱炭素ビジョンの改定に伴い再設定予定) |
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環境対応車比率(EV、FCV、HV、CNG、クリーンディーゼル合計) ※2030年度目標:98% |
・環境対応車比率92.1%(前期比+15.1ポイント) | ||||
・社会・ 環境課題解決に向けた新規サービス・ 事業の検討 | 新規サービス・事業の創出と拡大に向けた取り組み推進 | ・大型家電回収サービスの連携自治体の拡大(156自治体前年比+45件 ※2025.4.1現在) ・自治体との包括連携協定・災害協定・見守り協定等の連携を拡大(累計719件 ※2025.4.30時点) ・三井住友海上火災保険株式会社と連携した防災対策ソリューションの提供を開始 |
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(2)TMS・3PLネットワークの拡充と周辺ソリューションの高度化 | 労働力人口減少や、テクノロジーの進化およびお客さまのサービス多様化が要因となり、お客さまは物流ソリューションの高度化が求められている。「宅配便以外の領域」での機能や提案力の強化によって、お客さまのサプライチェーン全体への提案領域とサービス拡充を図る。 | ・TMS案件数の拡大 ・既存顧客のTMS利用率上昇 |
TMS売上高 ※2024年度目標:1,200億円 |
・TMS売上高1,249億円(前期比110.5%) ・GOAL®による提案営業等により着実に増加 |
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(3)国際・海外向けサービスの強化 | 世界経済の中長期的な成長を背景とする国際貨物量の拡大に対して、日本発着貨物を含む国際・海外向けサービスを強化することで対応する。お客さまの国際ビジネス拡大への寄与とともに、当社グループのラストワンマイルにおける物量の増加を図る。 | ・既存顧客シェア拡大 ・新規レーン、インダストリ拡大 |
エクスポランカ社営業収益 ※2024年度目標:1,360億円 |
・エクスポランカ社営業収益2,162億円(前期比189.9%) ・紅海の通航回避等の影響や、価格交渉・新規獲得が好調に推移し、単価・取扱量ともに計画を上回って推移 |
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(4)宅配便のサービス向上と効率化による収益性向上 | グループの重要な事業基盤である宅配便事業において、市場成長を見据えたキャパシティの向上や業務効率化に向けた投資を推進することで、サービス向上と収益性の向上による、宅配便事業における事業基盤の維持と持続的な事業成長を図る。 | ・新サービス開発、宅配便周辺サービスの強化 ・新領域への拡販 |
取扱個数 ※2024年度目標:13.8億個 |
・取扱個数13.2億個(前期比95.9%) ※集計範囲変更前の数値 ・消費者マインドの弱含みや、競争環境の激化により目標を下回って推移 |
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・適正運賃収受の取り組み | 平均単価 ※2024年度目標:662円 |
・平均単価662円(前期差+14円) ※集計範囲変更前の数値 ・2024年4月からの届出運賃の改定や、取引ごとの適正運賃収受の取り組み等により上昇 |
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・宅配便の生産性向上 | デリバリー事業営業利益率 ※2024年度目標:7.7% (協力会社を含む2024年問題対応による経費の積み上げにより、前年から低下見込) |
・デリバリー事業営業利益率6.8%(前期差▲1.1ポイント) ・委託単価の引き上げや従業員の給与水準維持を目的とした追加的な費用の計上等により減益 ・「置き配」サービスや郵便局受取の全国拡大を開始し、お客さまの利便性向上とともに再配達削減に寄与 |
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競争優位創出につながる経営資源の拡充 | (5)アライアンスを含めた国内外輸配送ネットワークの強化 | 労働力人口の減少、ドライバーの高齢化が進行する環境において、多様なパートナーとのアライアンスを強化することで、国内の輸配送ネットワークの維持・拡大を図る。また、海外では、現地の有力なパートナーとのアライアンスを活用した収益拡大を企図。 | 【国内】 パートナー企業(協力会社)との関係強化およびサポート体制の拡充 |
・SAGAWAパートナープログラムの拡充 ・適正取引促進会の実施 |
・SAGAWAパートナープログラムでは、専用サイト上でのサービス・機能の追加により、パートナー企業とのコミュニケーション強化と利便性を向上 ・適正取引促進会を継続的に開催し、パートナー企業との定期的なコミュニケーションの場を設定 |
【海外】 営業戦略に紐づいたアライアンス先の拡充 |
・アライアンス先の拡充 | ・事業領域拡張および顧客基盤の拡大を目的に、Morrison社のグループ入りを決定(2025年5月20日株式取得完了) | |||
(6)人的資本への投資およびエンゲージメントの向上 | 2030ビジョンにおける成長ドライバーである、宅配便以外の事業(TMS、3PL、国際等)を拡大するためには、グローバル人材、DX人材等のソリューション人材の獲得・育成が必要。新しいことに挑戦できる企業風土を醸成することにより、「次世代の競争優位性創出」を推進するための人材基盤の拡充を図る。 | ・経営人材、ソリューション提案ができる人材の育成 ・多様な働き方の実現、柔軟な人材登用 |
・経営人材、ソリューション人材育成に向けた研修等の実施 ・働き方改革施策の推進 |
・経営者育成プログラム、新規GM資格認定者向けセミナー、女性キャリア支援研修、ソリューション人材(GOAL・グローバル・DX人材)育成研修等の実施 ・DE&I推進に向けた社内委員会、セミナー等の継続的な実施 |
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・従業員エンゲージメント指標の定期モニタリング ・モニタリング結果を踏まえた取り組みの計画、推進 |
・「 従業員エンゲージメント」に関する質問への肯定的な回答の割合 ※2024年度目標:57% ・「従業員を活かす環境」に関する質問への肯定的な回答の割合 ※2024年度目標:55% |
・「従業員エンゲージメント」:55%(前年差▲1ポイント) ・「従業員を活かす環境」:53%(前年差±0ポイント) ・上記グループ全体結果の改善に至っていないものの、前回調査後のアクションに対しては約8割の事業会社で前年より高評価。事業会社ごとに結果分析のうえ、2025年度改善アクションを計画 |
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(7)DXへの投資による競争優位の創出 | 労働力人口の減少やテクノロジーの進化に加え、お客さまのサービス多様化等が背景となり、宅配便もこれまでとは異なる競争環境になる可能性がある。テクノロジーと当社グループのリソースを掛け合わせることで、DXを実現し、社会・お客さまが抱えるさまざまな課題を解決できるようなサービスの拡充を図る。 | ・3つの側面(サービスの強化、業務の効率化、デジタル基盤の進化)からの施策推進 ・DX企画立案を担う人材の育成 |
・DX戦略によるサービス/施策の推進 ・DX企画人材育成活動の推進 |
・ 住友商事、Dexterity社と共同でAI搭載の荷積みロボットの実証実験を推進 ・グーグル・クラウド・ジャパン合同会社と、DX活用による総合物流機能の強化に向けた戦略的パートナーシップ協定を締結 ・DX人材の育成に向けた基礎・応用研修の実施 |
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(8)オープンイノベーションなどによる新たな価値の創造 | グループ内の知見・価値観に捉われず、スタートアップや異業種企業が保有している優位性のある独自サービスを当社リソースと掛け合わせることで、新たな価値の創造を図る。 | ・アクセラレータープログラム開催と、新規事業創出に向けた体制強化 | ・新規事業/サービス創出に向けた活動の推進 | ・オープンイノベーションプログラムにおいて、パートナー企業7社による共創アイデアを発表し、うち2件を実証実験フェーズに進む協業案として採択 | |
ガバナンスの更なる高度化 | (9)グローバル化に対応したガバナンスの構築 | 上場企業グループとして、国内外の全てのグループ各社がそのステークホルダーに対して、活動の透明性や信頼性を実現するために、根本的な基盤である、ガバナンスとコンプライアンスの高度化を図る。 | ・国際法務機能の強化、海外子会社のガバナンス強化 ・予防的な法務/コンプライアンス強化に向けた体制整備や教育推進 |
グローバル化に対応したガバナンス強化、コンプライアンス高度化に向けた取り組みの推進 | ・海外事業会社の内部統制制度の強化活動を継続 ・国内外予防法務体制(個人情報保護・下請法対応 等)の整備・構築 ・セキュリティ教育、ハラスメント教育等の継続実施 |
(10)コンプライアンスの 継続的な高度化 |