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社外取締役インタビュー 鷺坂取締役

鷺坂長美
社外取締役

自治省、消防庁、環境省を経て、早稲田大学 非常勤講師、小澤英明法律事務所 顧問。認定NPO法人 救急ヘリ病院ネットワーク 理事長、(公財)埼玉県国際交流協会 理事長、(公財)全国市町村研修財団 理事を兼務。2019年6月に当社取締役に就任。

鷺坂長美 社外取締役

鷺坂取締役にお伺いします。
2024年3月期の取締役会において印象に残っている議案、議論についてお聞かせください。

 社外取締役の最も重要な役割は経営陣の職務執行の監督を行うことであり、取締役会においては、少数株主の意見を代弁する客観的な立場から議論に参加することを意識しています。そのうえで当社の取締役会は、常にかなり詳細な資料を基に綿密な議論がなされているという印象を持っています。

 昨年度の取締役会において、M&A関連の議案が上程されることが何度かありましたが、買収を検討している企業の企業価値評価やシナジー効果の算定等については、非常に精密な試算に基づいて評価されていました。そのような定量・定性的な情報に基づき、活発な議論が行われており、取締役会としては健全な運営がされていると評価しています。

東京証券取引所(以下、東証)から要請された「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の検討事項についてどのように評価されておりますでしょうか。

 当社の取締役会では、先ほども述べた通り定量・定性的なデータに基づき議論が行われています。また、ROEをはじめ、企業の経営効率を測る指標がさまざまな節目で示されているなど、当社の経営陣は資本コストや資本収益性等を十分に意識しながら経営していると評価しています。東証からの「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請に対しては、取締役会で議論のうえ、当社の現在の対応状況を開示していますが、持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現を目指すうえでは、今後もアップデートを継続する必要があると認識しています。

中長期的な企業価値向上を見据えたキャッシュアロケーションに関するお考えをお聞かせください。

 成長投資と株主還元にバランス良く資金配分することが重要だと考えています。物流業界においては、2024年問題が本格化する中、輸送力不足に対する取り組みが進んでいますが、これは2024年で完了する問題ではなく、2025年、2026年、さらにその先を見据えた対応が必要です。そのためには目先の輸送力不足や労働力不足への対応だけではなく、課題解決を中長期での成長につなげられるような投資を行っていかなければなりません。まず、成長投資の中で最も私が注目しているのはDXへの投資です。労働集約型産業の物流業界において、人が行う業務はまだ多くあると認識しています。こうした部分を情報システムやロボットで代替し、効率化・省人化を図ることは、労働力不足を解消するのみならず、今まで提供できていなかったサービスの展開が可能になる点で、重要な取り組みだと考えており、非常に期待しています。また、今建設中の大規模中継センターによる効率化の取り組みや、SGホールディングスグループ全体の成長に資するM&Aなども今後の事業成長のうえでは重要なファクターだと思っています。

 こうした成長投資から生み出されるキャッシュを株主に還元していくことも非常に重要です。全体のバランスを見ながら成長投資へ振り向けると共に株主還元の水準を維持・向上していくことについては注視しております。

カーボンニュートラル実現に向けた当社の取り組みに対する評価と課題をお聞かせください。

 当社グループは京都議定書が結ばれた1997年から、京都企業として非常に積極的に環境の取り組みを続けています。2022年4月には「脱炭素ビジョン」を公表し、2050年のカーボンニュートラルを目標に取り組みを進めており、自社保有の物流施設への再生可能エネルギーの導入やEVなどの環境対応車の導入、環境負荷の低い物流ソリューション創出等を実施しています。

 その中でも、再生可能エネルギーの活用に向けた取り組みは、公表している2030年度の目標から先行して進んでいます。また、施設からの排出という点では今後、ゼロエミッション化に向けての規制が厳しくなることが予想されます。そのため、ただ単に再エネ化に対応するだけでなく、より積極的に新しい形で倉庫や営業所を建設し、GHG排出量削減に寄与することで、世の中に還元していくということも大切だと思っています。環境対応車の導入については検証段階ではあるものの、軽自動車を対象に順次EV化が進んでいます。一方で、トラックについては現時点では技術的な制約もあり早期の導入は難しい状況にあるため、輸送機器メーカーの技術・製品開発の進捗に注意を払いながら検討していく段階と認識しています。

 カーボンニュートラルを実現するためには、川上から川下までのサプライチェーン全体で、GHG排出量を削減することが重要です。当社グループのScope3には、幹線輸送やラストワンマイル等の業務を委託しているパートナー企業によるGHG排出が含まれます。さまざまなパートナー企業と連携することで、全体の事業が構成されている当社のあり方からすれば、先ほど申し上げたような自社のGHG排出量削減の取り組みだけでなく、パートナー企業によるGHG排出量削減に対する施策も視野に入れて取り組むことが、今後ますます重要になると考えています。

 日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現することおよび、2030年度にGHG排出量を2013年度比で46%削減することを目標として掲げており、実現に向けた戦略や施策などについては、さまざまな場所で議論されています。2023年5月には、企業の脱炭素化に向けた諸施策を後押しするためのGX推進法が成立しました。このように社会環境が想定以上に速いスピードで変化する中で、当社はサステナビリティ委員会(委員長:当社 代表取締役会長)を設置し、カーボンニュートラルなどサステナビリティに関する最新の潮流を踏まえた非財務的な企業価値向上に関する施策などを議論・推進しています。

 今後も外部環境の変化に対応しながら企業価値を高めていくためには、PDCAを回し、継続的な見直しと改善を図っていくことが重要だと考えています。カーボンニュートラルの実現に向けて、サプライチェーン全体のGHG排出量を削減するためにパートナー企業や顧客も巻き込んだ取り組みを当社が積極的に進め、企業価値向上を実現していくことを期待しています。

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