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第三者意見

奥真美氏

奥 真美

公立大学法人首都大学東京
都市環境学部 都市政策科学科 教授

SGホールディングスグループの『CSRレポート2019』では、2017年度に設定したCSR重要7課題ごとに取り組みの方針、体制、取り組み内容と成果などを整理するという昨年からのスタイルを踏襲したうえで、記載内容の更新やさらなる充実が図られており、CSRレポートとしては体系的かつ網羅的で秀逸な仕上がりとなっています。加えて、今回からは、認定・表彰実績および各種データを巻末にまとめて掲載することで、一覧性を高め、経年的な変化の把握を容易にする工夫もなされています。

さて、今回、同レポートの内容面で私が特に注目したのは以下の3点です。1点目は、2019年4月1日付で就任された新社長のトップメッセージです。2018年度を最終年度とする3ヶ年の前中期経営計画「First Stage 2018」のもとでの取り組みを総括したうえで、新興国経済の急成長やITの高度化といった物流を取り巻く社会情勢の変化をにらみつつ、SGホールディングスグループとして「総合物流ソリューションの進化」と「経営基盤の強化」にこれまで以上に重点的に取り組んでいく意志が表明されています。2019年度からの3ヶ年を対象とする中期経営計画「Second Stage 2021」では「SDGsへの貢献」が明確に位置付けられ、それを受けて今後はCSR重要7課題をめぐる中長期的な方針や目標を検討していくことに加えて、2019年5月にTCFDが推奨する気候関連財務情報の開示に同グループが賛同したことから、気候変動が同グループの事業に与えるリスクと機会について検証を深めていくことが宣言されています。「新しい価値を創造する物流ソリューションで、生産や流通を支える社会インフラの一翼を担う」というグループの使命を改めて確認し、社会に対するコミットメントを明確に打ち出しており、読み応えのあるトップメッセージとなっています。

2点目は、上述の使命の実現に向けて、グループ内はもとより異業種の企業や多様な主体との協力・連携を図ることを通して、新たな社会システムやビジネスモデルの創出につなげている点です。たとえば、鉄道や船舶会社との共同によるモーダルシフトの取り組み、自動車再資源化協力機構のリチウムイオンバッテリー回収スキームへの参画、大学病院の入退院患者の荷物輸送システムの構築、シルバー人材センターおよび自治体との三者協定締結に基づく集配体制の確立、複数の都道府県や市との地域活性化包括連携協定に基づく地域産業振興や災害支援といった多岐にわたる社会課題解決に向けた取り組みの展開、鉄道・バス・乗合タクシーに加えて乗用タクシーとの連携拡大による集配システムの開始などが紹介されています。これらは、本業と社会/地域貢献とを表裏一体のものとして捉え、実践している好事例であるといえます。

3点目は、グループの活動や事業に係るデータや情報の一元管理体制を整備している点です。例えば、SGホールディングスが国内の環境データを一元管理するとともに、海外分についても集計して、各社の環境負荷低減に向けた取り組みにつなげているとのことです。このほか、グループ内の車両整備情報や大型商業施設向けの人・物・車・情報の一元管理などを推進することで、安全対策の徹底や物流サービスの高付加価値化の努力が重ねられています。グループ内で一元管理し蓄積されていくこうしたデータなどをいかに物流ソリューションの進化に活かしていくことができるのか、戦略性をもった展開が期待されるところです。

ところで、昨年の第三者意見では、今後の課題として以下3点を指摘しました。ひとつは、レポートの体系性と網羅性を確保しつつも、新規のもしくは特に重点を置いている取り組みをトピックスとして取り上げるなどの工夫をとおして、コミュニケーションツールとしてメリハリのある魅力的なレポートとしていくという点です。次に、CSRレポートにとっては不可欠といえる、中長期目標、そこに向けての単年度の取り組み目標と実績、実績の分析・評価、今後の改善策や方向性に関する情報が、すべてパッケージで明確にされる必要があるという点です。そして、従業員をはじめ、多様なステークホルダーの顔のみえる、血の通ったレポートにしていくという点です。これらの点については、引き続き着実な改善が図られるよう、大いに期待しています。

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