SGH

第三者意見

SGホールディングスによるCSR関連情報に対する第三者意見

東京都立大学・教授
奥 真美

1.進化する情報発信

SGホールディングスによるステークホルダーに対するCSR関連の情報発信は、方法と内容の両面において年々進化を遂げてきています。情報発信の方法について、昨年までは報告書形式のCSRレポートが発行されていましたが、2020年からはCSR/ESG Webサイトを設け、その中に、一般の幅広いステークホルダーに向けた『SDGsコミュニケーションブック2020』を含むCSR関連情報と、ESG投資家に向けた『ESG DATA BOOK 2020』を含む関連情報を掲載するという形に見直されています。

内容面では、強い信念と明確なビジョンが伝わってくるトップメッセージに始まり、SGホールディングスによる取組みとその成果のとりまとめにとどまらず、各種の認定や表彰等に積極的にチャレンジし、社外からの客観的評価を得る努力をした結果についても充実した情報発信がなされています。さらに、『SDGsコミュニケーションブック2020』では、多様な職種や部署の従業員の声が、写真入りで紹介されており、正に顔の見える、血の通った中身に仕上がっています。また、『ESG DATA BOOK 2020』では、環境・社会・ガバナンスの三側面ごとに特定した各指標について、経年変化と年度ごとの目標達成状況が整理されており、取組みの進捗が容易に把握できるものとなっています。

このように、異なるステークホルダーを意識して、必要な情報を精査したうえで、正確にかつ分かりやすく、さらには読み手の興味を引くような工夫が重ねられてきており、さらなる進化・深化への期待が高まります。

2.今後に向けて

ここでは『SDGsコミュニケーションブック2020』と『ESG DATA BOOK 2020』の内容を中心に、今後改善がなされると良いと思われる点を以下に指摘します。まず、『SDGsコミュニケーションブック2020』についてです。ここでは、「7つのFACT、7つのACTION!」と題して、2019年度からの3年間を対象とする中期経営計画において特定したCSR重要7課題と親和性の高い7つのSDGsそれぞれに関連する、世界もしくは日本におけるFACTとSGホールディングスによるACTIONが掲げられています。たとえば、SDGsの目標3(すべての人に健康と福祉を)との関連では「交通安全」を位置付けて、「世界では24秒に1人、年間135万人が交通事故で命を落とす」というFACTに対して、SGホールディングスのACTIONとして「交通安全を支える教育と技術によって、交通事故による死傷者数の半減に貢献」を挙げています。また、目標13(気候変動に具体的な対策を)との関連では、「+1.5℃に抑えるには人為起源のCO2排出ゼロに」をFACTとして、それに対するACTIONとしては「環境対応車、モーダルシフトなど環境に配慮した事業推進で脱炭素社会に貢献」を挙げています。ACTIONはいずれもFACTの改善に寄与するであろうことは間違いないのですが、両者の間にはかなりの距離があり、SGホールディングスの取組みがFACTの改善に具体的にどのようにどの程度寄与するものとなるのかが見通せません。たとえば、上述の目標13との関連では、SGホールディングスにおける環境対応車両の導入や鉄道貨物輸送の活用などによって年間排出総量がどの程度削減されることとなるのかに加えて、SGホールディングスの事業全体にかかるカーボンニュートラルをいつまでにいかなる方法で実現しようとするのかを明らかにしていく必要があるでしょう。社長のメッセージにおいては、TCFDへの賛同を表明した企業グループとして、「気候変動が事業に与えるリスクと機会をより深く検証」していくとの言及があります。この点も合わせて、脱炭素化に向けたロードマップを描いてみせることがまずは肝要だと考えます。

次に、『ESG DATA BOOK 2020』についてです。この中には中長期目標が設定されている指標がありますが、中長期としていつを視野に入れているのかが不明確なことに加えて、目標が定性的にとどまっている指標が散見されます。もちろん指標によっては定性的にならざるを得ないものもありますが、環境面の指標を例にとると、気候変動については「グループ全体におけるCO2排出量削減」、また、資源循環については「グループ全体における3Rの事業推進」とあり、いずれについても定量的な目標設定が望まれるところです。目標時期の明確化、できる限り定量的な中長期目標の設定、単年度の取組み目標と実績、実績の分析・評価、今後の改善策や方向性に関する情報のすべてを、パッケージとして明らかにしていく必要があります。

SGホールディングスによる今後の取組みと情報発信に大いに期待しています。